バイオリン材料の3つの共振周波数を用いて材料の剛性(Stiffness)やサウンドスピードなどを計算するプログラムです。 このプログラムは、Alvin Thomas KingのExcelプログラムをPythonに再構築したものです。
概要
プログラムは、バイオリンの前板と裏板材料 (木材) の特性の一つである剛性*1(Stiffness) を計算するプログラムです。前板と裏板の剛性は楽器製作において重要な要素であります。剛性によってアーチの高さとパターン、板の厚さなど多くのものを変えなければならないからであります。しかし、バイオリン製作者が作業を開始する前に材料の剛性を分かることができないということは製作者にとってはかなりのハンディキャップであります。したがって、このような剛性の不確実性を減らすことは製作者にとって大きな助けになります。本プログラムでは、材料のサイズと重さ、そして 3 つの振動モード (共振) の周波数を用いて木目方向剛性と木目垂直方向剛性、および、ねじれ剛性を計算します。さらに、材料の Q 値、音伝達速度、クオリティ値、応答特性などを計算します。
このプログラムは、Alvin Thomas King の Excel マクロプログラム*2を元にして私が Python で再構築したものです。したがって、計算方法と結果は彼のプログラムと同じです。プログラム画面右側にある説明 (AREA 5) の一部は、彼の解説をそのまま移したものであり、残りは私が追加したものです。画面左側にある図 (AREA 1) と本マニュアルは本人が作成しました。このマニュアルで下線が付いているところは彼の解説をそのまま移したものであります。
本プログラムの前身である Alvin Thomas King の Excel マクロプログラムは、Oliver Rodgers の FORTRAN プログラム [1] をエクセルに再製作したものであり、剛性以外の他の項目の計算は参考文献 [2],[3] に基づいています。
Excel マクロプログラムの剛性計算は、Oliver Rodgers のプログラムと比べて精度に若干の改善*3が行われました。
Oliver Rodgers の FORTRAN プログラムと Alvin Thomas King の Excel マクロプログラムは、上記の改善によって計算結果が少し異なります。また、本プログラムと Alvin Thomas King の Excel マクロプログラムは結果値がほぼ一致しますが、場合によっては結果値の最後の数字で「1」の差が生じることがあります。それは、Excel とPython の丸め規則が異なる*4ため発生する誤差であります。
*1 ある物体が力を受けるとき、形状や体積変形に対して抵抗しようとする性質であり、強度 (Strength、材料に衝撃を与えてその材料が破壊されるまでの変形抵抗) とは異なる概念である。
*2 http://www.fiddleheadstrings.com/fiddleheadstrings_web_revised_dec17_010.htm
*3 剛性計算は、繰り返し計算を通じて近似値を求める方法で行われます。その繰り返し計算における精度が改善されました。
*4 Excel:2.5→3, Python:2.5→2, Python は丸めされる数字が 5 のとき、直前の数字が偶数なら上げない
本プログラムの画面左側には、参考画像 (AREA 1)、入力欄 (AREA 2)、計算ボタン (AREA 3) があり、右側には計算された結果値 (AREA 4) とプログラムの説明 (AREA 5) が表示されます。入力欄には、サイズと重量、共振周波数、Q 値、音 (振動) の伝達速度 (Lucchi Meter) などを入力します。右側の結果欄には、入力した値から計算された体積、密度、剛性、音伝達速度、クオリティ値、応答特性などが表示され、前板 (Spruce) と裏板 (Maple) を別々に計
算するように区分されています。
計算に使用された計算式または計算方法は [使用法] の項目で説明しますが、内容が複雑なものは省略しましたので詳細は参考文献をご確認ください。
AREA 2 の下線付き入力項目は必須入力項目です。半面、本マニュアルで下線付き説明は Alvin Thomas King のExcel マクロプログラムにある解説をそのまま移したものです。
本プログラムを楽器製作に使わないといけないのかという質問に、正解はありません。それぞれの判断で適切に使用してください
用途
バイオリンの前板 (Spruce) と裏板 (Maple) のクオリティーを把握したり、または製作時の計画を立てるために使用します。本プログラムの理論的基礎である Oliver Rodgers の研究では、材料の大きさに範囲を決めて実験を行ったため、材料の大きさがその範囲から外れると結果の誤差が大きくなります。したがって、本プログラムを使うときはなるべく材料のサイズを守ることが誤差を低減させる方法になります。材料サイズの範囲は、Section 3.1を参照してください。Rodgers の研究は、主に一般的なバイオリン材料の大きさに合わせているので、本プログラムをビオラやチェロ材料に適用することはお勧めできません。
インストール
本プ ログラ ム はポー タブ ルバ ージ ョ ン で あ る た め 、イ ン スト ー ル 作 業 は 必 要 あ りま せ ん 。解 凍 し「Stiffness Calculator v.X.X.X」フォルダにある「Stiffness Calculator v.X.X.X.exe」ファイルをダブルクリックすると、すぐにプログラムが実行されます。ただし、コンピュータの性能によっては実行に時間がかかる場合もあります。
本プログラムの実行時に、「ウイルスまたは疑わしいファイルが含まれているため、そのファイルを隔離しました。」のような警告とともに実行できないことがあります。それは、Python コンパイラの問題によるものであり、このプログラムにはいかなるウイルスも含まれていません。よって Windows システムで上記の警告が表示されたときはそのファイルを隔離解除し、もう一度実行してください。
ユーザーマニュアルの閲覧
プログラムとユーザーマニュアルのダウンロード
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